「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

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蓬莱洞の奇跡8

2時間後。綾女は黒髪をシーツの上に広げ、火照って汗ばんだ肌をさらしていた。胸元にふたつ新たに咲かされた紅い華。床にはティッシュと服が散らばっていた。一糸まとわぬ二人は唇を重ねていた。
「きれいだよ、綾女」
低い左近のささやき。抱かれている間、何度も何度も聞かされた。1週間ぶりに二人は深く愛し合った。左近は今回はきちんと準備していたが、使う間が惜しいほど綾女を愛した。抱くたびに綾女は艶やかに美しくなる。
やっと息が落ち着き、綾女は体を起こした。まだ慣れない体で何度も上り詰めたためか、足に力が入らない。左近が軽々と抱き上げ、浴室へ運んだ。
シャワーの雫が髪を濡らし、綾女をますます色っぽく際立たせる。狭い浴室で再び左近は綾女を愛した。

「もう駄目よ…」
1時間後にやっと解放され、綾女はソファに身を横たえた。シャワーから出てシーツの汚れ方に呆然とし、慌てて交換する。マットレスに染みちゃうんじゃないかと真剣に心配した。この分だとシーツをあと3枚は買わないと、替えがなくなってしまう。乾燥機があってよかったとぼんやり考えた。
時計を見ると夕方の4時になっていた。
「もうこんな時間。左近、夕ご飯どうする?」
「さっき食べちゃったからな、買い物に行くか」
「そうね。一緒に行くわ。スーパーの場所とか病院とか知っておいた方がいいでしょ」
「そうだな」
外に出るとまだ夏の日差しが照りつける。
綾女は帽子をかぶって外に出た。行きつけのスーパーは夕市の時間になっていたため、混んでいた。慣れた様子で人込みをくぐりぬけ、綾女が一通りの物をかごに入れて来た。
「すごいな、こんなに混んでいるのに」
「慣れよ、慣れ。左近もじきに慣れるわ。あとは、ドラッグストアで買うものがあるの」
綾女が買い物メモを見ている。
「じゃあ、俺がドラッグストアで買い物をしてくるよ。隣だろ?」
「そう?ありがとう。これ買い物メモとポイントカード。2倍デーだから」
綾女が買い物したものをまとめて外に出ると、左近も戻ってきた。ポイントカードを綾女に返す。
「私の物も書いてあったから、その分は払うわ」
「いや、いいよ。これから一緒に暮らすんだ。それよりも、綾女重そうだな。持つよ」
「ありがとう」
並んで家に向かう。帰宅するとすぐに綾女は台所に立った。左近は綾女に聞きながら日用品をしまっていく。しまい終えると料理を作る綾女をじっと見つめた。
「なぁに?」
少し顔を赤くして綾女が恥ずかしがる。左近は台所に入り、手伝い始めた。綾女が何も言わないのにしっかりと手伝っている。
「すごいのね、左近。何を作っているのかわかるの?」
「何となくな。作る手順が似ているから」
「そういえば、蓬莱洞でも手際よく作っていたものね…」
その後のことを思い出して、綾女は不自然に黙ってしまった。何もかもが初めてのことで、数回会っただけで結ばれてしまった。今まではどんなに好きになっても唇さえ許さなかったのに、左近とはこうなることが当たり前で不自然とは思えない。
「どうした?」
手も止めてしまった綾女に優しく声をかける。綾女が持っていた包丁に手を添えてそっと外した。そして綾女を抱きしめた。
「少し休んでおいで。あとはこれを炒めるだけだろう?」
「うん」
綾女は離れてソファに座り、台所の左近を見た。
左近と出会って今日で3回目。初めて会った時に唇を許し、2回目で体を許し、今回は同居を許している。1か月後、1年後はどうなっているのだろう。
2週間後からは、本当に左近と生活を共にするのだ。本当にこの流れでいいのだろうか。
「できたよ」
左近がテーブルに料理を並べた。綾女の後を引き継いで炒めただけだが、照りが違う気がする。
「すごくおいしそう。同じ材料なのに」
一口食べると、味までが違うようだ。
「なんだろう、すごく不思議」
「一緒に食べているからだよ。人が作ってくれたものはおいしく感じるんだよ」
片付けまで左近はしてくれた。その間に綾女はお風呂に入った。
お風呂から出ると、左近がちょうど片づけを終えたところだった。
「じゃあ、俺も入ってくる」

シーツの乾燥が終わり、綾女はアイロンをかけてしまった。これからはもっと頻繁にするのかと思うと、ちょっと恥ずかしくなった。今敷いてある新しいシーツは、明日にはもう洗濯だろうか。でも買い物に行く前に2時間もしたし…。
「綾女」
髪がまだ湿っている左近がキスをしてきた。
「3時間もキスできなかった」
またキスをする。くすぐったくて綾女は笑った。左近も笑った。
「やっと笑ったな。さっきはなんか暗い顔をしていたぞ」
「そうだった?」
「食べているときは嬉しそうだったが、その前に手を止めて考え事をしていたから」
「ごめんなさい。なんか色々考えちゃって」
左近が綾女の隣に座って肩を抱く。
「俺もさ、綾女と会ってまだ今日で3回目なのに、こんなに幸せでいいのかと思うと、ちょっと怖いくらいだよ」
「同じこと、考えていたのね」
「綾女もそうか、だからか」
左近は綾女と向き合った。
「これでいいんだよ、俺たちは。出会うべくして出会った。そして結ばれて、これから共に生きる」
綾女はゆっくり頷いた。

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