左近が家を空けてから早くも半年がたとうとしていた。
暦の上ではもう秋だが、まだ蒸し暑い日は続いている。
ひとりきりで左近の誕生日を迎え、またひとりきりで自分の誕生日を過ごした。ひとりで寝るベッドはこんなにも広すぎるものだったと、初めのうちはよく思った。腰まで伸びた髪を肩甲骨の辺りで切りそろえたのもこの頃だった。
「左近・・」
主のいないもうひとつの枕。それを抱きしめて寝るのは、もう癖みたいなもの。
「会いたいな」
裸身にシーツをまとい、午睡に浸る。
カチ・・
静かに玄関の鍵が開けられる。
左近が帰ってきた。
半年振りの我が家。少しずつ窓が開けられ、夜風が気持ちいい。
汗だくだった左近はすぐにシャワーに入り、汗を流した。
「綾女・・?」
寝室から気配がした。真っ暗の中目を凝らすと、綾女の白い裸身が浮かび上がって来た。
「あ・・」
左近の気配で綾女は目を覚ます。体を起こすとシーツが落ち、慌てて胸元を覆う。
「なんて格好で寝ているんだ」
「だって暑くて。着るから、出ていて」
綾女の香りが漂っている。綾女は服を着ると部屋の外に出た。
「つい寝ちゃった。素麺でいい?」
「いや、いい。綾女は?」
「私もいいけど、左近が大丈夫なら・・」
「ただいま」
綾女はにっこり笑った。
「おかえりなさい」
左近の真剣な顔が綾女を見据える。
「さこ・・」
言葉を、左近は吸い取った。
- 現代版
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