綾女が帰宅したのは午後だった。
すでに左近は帰ってきており、そうじをしていた。
「おー、お帰り」
「そうじしているの?」
「見ての通りだ。ひと月いなかったからな、長野は涼しかったか」
綾女は雑巾を手に取り、サッシを拭きはじめた。
「兄さんに子供が生まれてね、すっごくかわいくってかまっていたらひと月たっちゃって。とてもちっちゃいのよ、手なんか紅葉みたいでこう、触るの」
綾女は自分の胸に手を当てた。左近がもう片方の胸に触る。
「こうか?」
ゆっくり揉む。
「もう、バカ」
綾女は真っ赤になった。左近は笑った。
「でね、兄さんに左近のこと話した」
左近の顔が引き締まる。
「小さい頃よくうなされていたことは兄さんも知っているから、その左近だということは言ったの。もちろん前世なんて半信半疑だったけど、そこまで本気なら連れてこいって。どうする?」
「兄さんからその話が出る前に、俺から挨拶に行っておけばよかったな」
「え?」
「綾女さんを俺にくださいって」
綾女は雑巾を落とした。今のってプロポーズ・・・。
「本気・・なの?」
「当たり前だ。お前に再会したときから俺はお前だけだ。でもまだ学生だろう?」
「そうだけど」
「今度のお正月、一緒に行こう」
左近はチャンス到来とばかりに嬉しそうだった。
- 現代版
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