「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

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電話1

「もしもし」
久しぶりに聞く綾女の優しい声。俺は返事が出来なかった。
「もしもし?」
少し訝しげになる。
「左近なのね?」
「あ、ああ」
俺はきっとほっとした声を出していただろう。
「嬉しい、電話もらえて」
「うん」
「誰か・・いるの?」
歯切れの悪い返事に気遣うような声。
「蘭丸がいたんだ。今まで」
「え、今朝学校に来てたよ?あ、じゃああの後すぐに行ったんだ」
「春から俺の隣に住むことになって、下見に来ていた」
「お隣?ふふっ、面白そう」
「他人事だからそんなことが言えるんだ」
電話の向こうから綾女の笑い声が聞こえた。
「髪を切ったんだな」
「何で知っているの?」
「蘭丸が言っていた」
「そうなの。男みたいになったって佳代に言われてね」
「いや、きれいだよ」
綾女の動揺がわかった。
「蘭丸が携帯で撮った写真を見せてくれた」
綾女の耳元で囁くように、声を出す。
「きれいだ・・」
「ありがと・・」
「待ち受けになっている」
「恥ずかしいなぁ」
俺はふと居住まいを正した。
「この間はすまなかった」
「あ、私こそごめんなさい」
あー、照れる。でも言わなければ誤解したままだ。
「本当は綾女を抱きたかった」
言ってみると、ものすごいことだった。俺は綾女に対して何を言っているんだろう。でも勢いだ、言ってしまえ。
「でも綾女は、今穢してはいけないと思ったんだ。だから帰ってきた。あのままいたらきっと綾女を・・」
「それは、私が怖がっていたから?」
不意に綾女の声が遮った。
「…………」
図星で返事が出来ないでいると、綾女は言葉をつないだ。
「ありがとう、そこまで私のことを気遣ってくれたのね。でも私は左近となら、その・・大丈夫だと思う」
最後は声が小さくなった。俺は鼓動が一気に早くなった。次の言葉を聞くまでは。
「誰かに聞いておいたほうがいいのかな」
「それはだめだ」
冗談じゃない。綾女には俺がじっくり教える。
「でも」
「俺が教えるから」
嫉妬心が丸見えで、綾女はそれを察して笑った。
「左近に任せる」
「ああ」
「今度、いつ会えるかな」
「そうだなぁ・・・」
俺はカレンダーを見た。どうにも予定が中途半端でまとまった休みが取れない。
「私は週末ならそっちに行ってもいいよ。今週は無理だけど」
「わかった。予定を確認してまたメールする」
「うん、じゃあ」
「うん、綾女」
「なぁに?」
俺は携帯にキスをした。そして電話を切った。

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