左近の腕の中で目を開ける。すぐ目の前には端正な顔立ちの左近が静かに寝息を立てている。
クリスマスの誘いを受けた時、綾女は考えてしまった。まさか今年中にこう発展するとは思ってもいなかった。誰かに聞けるわけでもなく考えすぎてしまっていたが、左近は優しく教えてくれた。
「んっ」
下腹部が少し痛んだ。それは忘れられる痛み。初めての夜に3回まで抱かれたことは覚えているが、それからはどんどん増す快楽に流され、あまり覚えていない。左近は何度回数を重ねても丁寧にやさしく綾女を抱いた。
「おはよう」
左近の低い甘い声。綾女が顔を上げると、そのまま唇が重なった。
「おはよう」
恥ずかしげな綾女の声。左近はぎゅっと抱きしめた。
「かわいいな、綾女は。このまま一緒にいたい」
「だってもう朝よ、起きよう」
シャワーを浴び、ふたりで向かい合って遅めの朝食をとる。
「今日もアルバイトなの。色々・・・ありがと」
顔を赤らめて綾女は左近にキスをした。
それから約1週間はお互いに忙しく、綾女はレポートを片付けながら家事とアルバイトをし、左近も取材が入ってなかなか連絡を取り合えずにいた。
「家で年越しをしないか?」
左近が送ったメッセージに既読がついたのは30日の朝。返事が来たのはお昼だった。
「お誘いありがとう。明日はアルバイトが夕方までで、あとは3日までお休みです」
「クリスマスの時と同じように、夕方車でお店まで迎えに行くよ。ずっと泊まるなら荷物も多いだろう?」
「左近たら…ずっと泊まっていいの?」
「いいよ。一緒にいよう」
「ありがとう。では、また明日」
31日夕方。定時で上がった綾女は左近と一緒に買い物をした。
「仕事は昨日で終わらせたから、今日は1日大掃除をしていた」
「そうなんだ、いつもきれいにしているからそんなに大変でもなかったんじゃない?」
「いや、そうでもないよ。普段なかなか行き届かないところがあってね」
話しながらかごに入れていく。買い物を終え、左近の家に入るとピカピカだった。
「わー、すごーい、掃除頑張ったのね。おこた!いいわぁ」
フローリングのワックスが反射している。ちり一つ落ちていない。
「汚しちゃったら申し訳ない、ごめんね」
「大丈夫だよ、その分掃除してもらうから。ははは」
掃除にしても料理にしても左近は完璧だった。綾女は気後れしている。おせちこそ作ってはいないが、冷蔵庫にはお正月の食べ物が調理して入っていた。
「あの、私、お雑煮作ろうと思って材料買ってきていたの。冷蔵庫に入るかな」
「あ、そうか、お雑煮。俺気づかなかった。綾女はさすがだな。冷蔵庫、うーん、工夫すればしまえるかな」
綾女は手際よく冷蔵庫内を整理し、材料をしまった。
「もう20時か。年越しそば、食べるだろ?」
言いながら左近は冷蔵庫から天ぷらの材料を出す。
「先にお風呂入っておいで」
「え、いいの?」
「それとも一緒に入るか?俺はそっちがいいけど」
「先に入らせてもらいますね」
キッチンで左近が笑っていた。
綾女はピカピカのお風呂で手足を伸ばして浸かった。肌を見せたとはいえ、明るいところでは恥ずかしい。クリスマスの時のような緊張感はなかったが、ドキドキしていた。お気に入りのシャンプーとボディソープで丁寧に洗う。お風呂上りにちょっと思い切った下着をつけた。
「お風呂、ありがとう」
「ああ・・・じゃあ、あとはそばを茹でてくれ。器は出してある。汁は任せる」
「うん、わかった」
揚げたての天ぷらがきれいにバットに並べてある。綾女はお湯を沸かし、そばを茹で、つゆを作った。
綾女の香りが残るお風呂場で、左近はあの夜の綾女を思い出し、悶々としていた。
「ちょっと俺がヤバいかなー、でもそばが延びちゃうな」
なんとか気を紛らわせた。
「左近、できたわよ。タイミングいいわね。おこたでいい?」
こたつにそばを運ぶ。左近が冷蔵庫からシャンパンを出した。
「日本酒はきついだろ。これなら口当たりがいいから」
「うん」
ふたりで作った年越しそばを食べる。
「おいしいね」
「ああ、うまいな」
キッチンを片付け、こたつでシャンパンをゆっくり飲む。テレビをつけると、除夜の鐘が映った。
「もう今年も終わりね。来年はもっといい年になると思うの」
「そうだなぁ、去年の今頃はまだデートらしいデートもしていなかったもんな」
「ふふ、今年は色々したね。デートもお泊りも」
「これからもするぞ。ずっとな」
少し酔った綾女が頬を紅潮させている。見つめあい、溶けるようなキスを繰り返した。左近はテレビとこたつのスイッチを切った。
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