陽射しが春の陽気に変わってきた。
綾女が帰宅すると、いつもスマートな服装の左近が珍しく厚着をしている。顔色も悪い。
「左近?大丈夫?」
1週間ほど執筆に集中しており、寝室も別にしていた。綾女は左近を気遣い、家事一切を行い負担を減らしていた。
「仕事は終わったよ」
「顔色悪いよ。風邪ひいた?ビタミン不足かしら」
「綾女不足」
左近のおでこに手を当てようと近づいた綾女を抱き寄せ、柔らかいニットの胸に顔を埋めた。
「もう、左近たら…でもだめよ、熱があるわ」
少しだが左近は熱を出していた。厚着をしているのは、これから熱が高くなるのかもしれない。
「綾女が欲しいんだ。抱きたい」
「だめです」
「えー?」
左近が綾女を見上げる。甘えた顔をしている。
「もう我慢できないよ…」
「風邪が治ったらね。今無理をしたら…」
左近は綾女の胸を揉んでいた手を離した。いつもなら揉みはじめたら止まらないのだが。
「約束したからな」
左近は風邪薬をのみ、布団に入り、すぐに眠りについた。
「本当に風邪気味だったのね。早いに越したことはないわ」
胸に左近の手の感触が残る。甘えた顔に綾女も身を委ねたくなったが、左近の体調が戻るまでと気持ちを抑えた。
左近はこんこんと眠っている。おそらくあまり睡眠もとっていなかったようだ。綾女は夕食を作り、左近に声をかけようとしたがやめておいた。寝る前に左近の熱を確認し、すっかり下がっていることに安堵した。
明け方に目を覚ました左近は、体調が戻っていた。お風呂に入り、綾女の部屋をのぞく。起こさないように抱き上げて自分のベッドに運んだ。たまらなくなり、キスをする。
「左近、もういいの?」
「すまん、起こしたか」
「いいの。治ってよかった」
左近のお腹が鳴った。綾女はクスクスと笑い、着替えてキッチンに立った。
「すぐできるから。あら、雪」
窓を開けると、春の雪が降り積もっていた。大雪になるのか、その勢いは強い。
「綾女、バイトは?」
「今日と明日は休み。あさってには溶けるかしら。昨日買い物をしておいてよかったわ」
「俺も本当は今日締めきりだったんだ。昨日のうちに終わらせておいて正解だった」
「そうね。この雪じゃ出かけるのは気後れするわね」
朝食を並べる。お腹が空いていた左近は、気持ちよく平らげていく。片付けと掃除をふたりで済ませた。
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