左近は麻酔から醒めた。
白い天井をじっと見つめ、傷の痛みにより、自分がなぜここにいるかやっとわかった。
「気分はどうですか」
優しい声が聞こえ、左近は重い首をそちらに向けた。ベッドサイドに腰掛けた綾女が微笑んでいる。
「綾女・・!」
起き上がろうとして傷の痛みに呻いた。綾女がそっと左近を寝かせた。
「慌てないで。ここは病院です。日向さんはお腹を刺されて、ここで手術を受けたんですよ」
落ち着いた声で綾女が説明する。左近はじっと綾女を見つめていた。愛おしさが溢れていた。
「私に、何か・・?」
綾女が少し首をかしげた。あの頃と変わらない仕草。やっと出会えた。左近の手が綾女の頬をそっと触った。
「綾女」
綾女はされるままになっていた。いつもなら引っ叩き、怒突いていたのだが。左近の手に、なぜか懐かしさを感じた。
「左近・・」
綾女の唇がふと、左近の名を呼んだ。その声に綾女は我に返った。表情がきりっと引き締まる。
「ご家族に、あなたが入院していることを連絡したいのですが」
「俺は、身内はいません」
「お仕事は?」
「警察官です」
「では、警察にあなたのことを連絡してもよろしいですか」
「もう知っていますよ、ほら」
綾女が振り返るとドアの向こうに人影が見えた。
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