目の前で綾之介が倒れた。
たまたま近くにあった発破の爆風に飛ばされたのだ。
本当にこいつは影忍か?
左近はため息をついて綾之介を抱え上げた。
「!」
違和感に気づく。
驚くほど軽く、細い。そして柔らかい。
男はもっとこう、骨っぽくて重かった。
「まさか・・女なのか」
気づいたがそれを言葉にしてしまうともう綾之介は女にしか見えなかった。
同時に今まで抱いていた己の気持ちの違和感に合点がいった。
危なっかしくて目が離せず、かといって守ろうとするとこっぴどく拒まれる。そんな綾之介が可愛くも思え、そんな気持ちを抱く自分に驚いていたのだ。
女だったんだな…。
赤い忍びの衣装はさりげなく隠してはいるが、触れるとその起伏に富んだ体がよくわかる。
「だから、里で風呂を断ったんだな」
葉隠れの里での出来事を左近は思い出し、ふっと表情を緩めた。
「何を笑っている」
縁側の柱にもたれかかりながら綾女が問う。
「いや、初めて俺たちが会った時のことを思い出しただけだ」
左近は綾女の隣に座り、胸元を覗きこんだ。
「昔の話か。早いものだ、もう5年になる」
綾女の髪をそっと撫で、指先でもてあそぶ。くすぐったそうに綾女は首をすくめた。
綾女の胸に抱かれている赤子も、少し首をすくめた。
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