「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

  1. あの時代
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本当の気持ち19

風に温かみが増してきた。
庭に植えてある蝋梅が咲き始めている。
その香りは綾女の気分をいくらか楽にしていた。
ひどい風邪を引いたのだ。
熱は3日間続き、うつるからと左近を寄せ付けなかった。
自分で薬湯を調合し、ほとんど物も食べられずに過ごした。
やっと熱が下がり、気分も楽になった綾女は少し障子を開けた。
熱がこもった薬湯臭い部屋の空気は、外の新鮮な空気と入れ替わった。
「明るいな…」
ゆっくり静かに呼吸をし、体の隅々まで新鮮な空気を取り入れた。
「もう具合はいいのか?」
部屋の外から左近の声がした。
「だいぶいい。心配をかけたな」
「入ってもよいか」
「ああ」
左近が静かに入ってきた。
畳の上に黒髪が波打ち、うなじを見せて綾女は横座りになった。
食べていなかったため幾分ほっそりとしているが、顔色はよく、瞳はきらきらしていた。艶やかさという言葉が合う。
「左近?」
綾女に見とれていた左近は視線を庭に逃がした。
「蝋梅の香りがする」
「もう、春だな」
左近は夜具を綾女にかけた。
「まだ無理はしないほうがいい。熱が下がったばかりだろう」
「…そうだな」
左近は唇を合わせようとしたが、綾女に止められた。
「うつる」
「仕方ないな」
左近は笑って額に口づけをした。
「早くよくなれ」
「まじないか?」
左近はふふっと笑って部屋を出、障子を閉めた。
綾女の額に熱が灯っていた。その熱が頬に広がり、綾女は両手で頬を押さえた。そして甘い声が唇からつむいで出た。
「左近」
幸せそうに目を閉じ、そのまますうっと寝入った。

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