綾女の心が揺れた。
左近の皮肉な表情、思いがけない優しさ、熱い唇、力強い腕・・・。
綾女の今の想いを左近に伝えたい。左近の腕に抱かれたい。
想いはあふれんばかりになっていた。
「お前の答えは「諾」だな」
老婆が労わるように言った。
「だが、ひとつ条件がある」
「条件とは」
「お前の、この者に対する記憶を失くしてもらう」
「記憶を・・失くす?」
「想いが本物であれば記憶は戻るはずだ。戻らなければ、また別の人生を歩めばよいことだ。私は蘇らせるだけ。あとはお前たちの勝手だ。このままでもよいのだぞ?」
綾女は横たわる左近を見つめた。
・・お前の思うようにやればよい・・
そう言ったように見えた。
- あの時代
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