「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

  1. あの時代
  2. 45 view

夏の終わりに5

「まったく、まどろっこしいな」
月を見ていた左近に蘭丸が声をかけた。
森蘭丸。表向きは信長の小姓を勤め上げた切れ者であり、絶世の美青年。だが裏を返せば野望に溢れた、人にあらざるもの。
だが安土で妖刀に腹を刺し貫かれ、そこから毒気がすべて抜けてしまったようだった。
今は至って普通の、美青年。
散々な目にあわされてきた左近たち影忍にとっては、いまだ払拭し切れない部分もある。特に左近はあるひとつのことに気づき、気持ちが焦れることがある。
「何がだ」
蘭丸を振り返らずに左近が答える。月を見ているようで意識は蘭丸に向けられていた。
「ひと押しすれば、簡単に手に入るだろう?」
「お前ならそうするだろうが、俺はそんなに焦ってはいない」
蘭丸はふっと鼻先で笑った。
早手の左近ともあろうものが、ひとりの女にそこまで慎重とはな」
「早手ではない、疾風だ」
「どちらも似たようなものだ。こっちはこっちで勝手にさせてもらう」
踵を返して蘭丸は綾女の部屋に向かった。
左近は慌てて立ちふさがる。
「何だ、お前の許可をもらう必要はないが」
蘭丸はおかしそうに笑った。左近は痛いところを突かれて、気まずい顔をした。
「まぁいい。今夜はおとなしく寝るとしよう」
蘭丸が自室に入ると、左近はため息をついた。
あの森蘭丸が相手になるとは、手強かった。人の心理を見事につき、操り、その気になるように仕向けるのは、蘭丸にとって造作もないことだった。その蘭丸が絶対の自信を持って綾女を落とそうとしている。その自信が綾女に心底惚れているという思いを助長している。
「でもな・・・。焦ってもあの時の二の舞になるだけだし」
左近はいつか叩かれた頬をそっと押さえた。

あの時代の最近記事

  1. つなぎとめて3

  2. つなぎとめて2

  3. つなぎとめて1

  4. 覚醒3

  5. 覚醒2

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


カテゴリー
アーカイブ