ここは伊賀の里。
左近様たちが来てから、半年たっている。
初めてふたりが姿を現した時、桜の中に美男子がふたり・・・。そう思った。綾之介様は間もなく女性だとわかったのだが。
その頃から左近様は綾之介様にちょっかいを出しては、怒られていた。
今考えれば、子供が好きな女の子に意地悪して気をひくような、そんなちょっかい。
左近様も案外可愛いところがあるんだ。
あるとき、侍女として綾之介様が大物の屋敷に潜入した。
同じ屋敷に別件で忍んだ左近様。
小袖を着、髪を下ろし、薄く化粧をした綾之介・・綾女様がそこにいた。
「なぁ陣平。アレは綾女か?」
「はぁ、そのようですが」
左近様は明らかに動揺していた。普段あまり感情を表に出さない左近様がそんなに動揺するとは。
「左近様?」
俺の声に左近様は我に返り、ため息をついた。
「そうだな、俺らしくもない。自分の仕事をしないとな」
パタパタと足音が聞こえた。
「弥生様、お館様のお召しでございます」
すっと戸が開き、中から夜着を着た綾女が出てきた。案内に従い、主の部屋に姿を消した。
「お召し?って・・・」
俺は青くなった。左近様の姿を探すが、自分の仕事のために姿を消していた。
俺が、止めなければ!
俺は自分が忍びであることを忘れ、戸を勢いよく開け放った。
そこには屋敷の主が転がっていた。
「何だ、陣平か。お前、忍びだろう?もっと静かにできないのか」
いつの間にか俺の背後に綾女様が立っていた。すでに忍びの姿になっていた。
「長居は無用だ。行くぞ」
数刻後・・・。
「馬子にも衣装とは、よく言ったものだな」
「何を言うのだ」
縁側に左近様と綾女様が立っている。結い上げた綾女様の髪を、左近様はほどいてしまった。
「左近、何をする」
「いつのまにか・・」
「え?」
左近様の指の間をさらさらと綾女様の髪が流れ落ちていく。見つめあうふたりは、俺が見ていても顔が赤くなるくらい熱い視線を交わしていた。
「俺は、お前に惚れている」
綾女様の顔がさっと赤くなった。左近様は綾女様を抱きしめている。綾女様の腕がゆっくりと左近様の背に回された。
ああ、そうなんだよな・・・。
本当は双方想い合っているのに、ふたりとも素直じゃないんだよな。何事か事件がないと、きっかけが作れないなんて、本当に不器用なおふたりだ。
左近様が何事か囁くと、綾女様は耳まで赤くして頷き、目を閉じた。
まさか、まさか・・・いよいよか?
ふたりの唇がゆっくりと重なった。綾女様は目を閉じていたが、左近様はチラッと俺を見た。
はいはい、わかりましたよ・・。あっち行けということでしょ。
翌朝、左近様の頬が見事に紅葉していた。
「痛そうですね、左近様」
「言うな、陣平」
ムスッとしている表情だったが、目の光だけは違う輝きを放っていた。そう、リベンジを誓う瞳の力強さが現れていた。綾女様はもっと機嫌が悪く、声もかけられなかった。
そして翌朝。左近様の両腕に痛々しい引っかき傷が増えていた。
「あの。僭越ながら申し上げますが・・・まだお早いのでは・・」
左近様の目元が色っぽく緩んだ。その視線の先には綾女様がいた。首筋にふたつ、紅い華。明らかに色香が増している。
「もしや」
俺は嬉しくなった。とうとうふたりの想いが実を結んだのだ。左近様は腕をさすりながら頷いた。
「痛かったら俺を打てと言ったら、こんなに爪を立てられてしまってな・・なおのこと惚れちまった」
さりげないお惚気だなぁ。でも左近様、その姿で行ったら綾女様が恥ずかしがりますよ・・・。
- あの時代
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こんにちわ、おりぼんです。
いやぁ・・・いい味出してますね、陣平。
陣平の使い方がナイスです、紅梅さん!
こんにちは。
陣平は左近も綾女も大好きで、陰ながら応援しているんです^^
しかし、陣平目線は書きやすいわ〜♪