もとの話はこちらです。
「久しぶりー」
「元気だった?」
そんな会話が飛び交う顔合わせ。そう、ここは「妖刀伝劇場版」の収録現場。
炎情の章が完結し、もう会うこともないと思っていた矢先の出来事に、すっかり同窓会気分になっている出演者。
面子はまったく変わらないが、各々の状況は少しずつ変わっている。
「陣平、少し背が伸びたか?」
「左近様、お会いしたかった・・・(キラキラの瞳)」
「左近様、私の陣平までかどわかさないでください」
「あら、仲いいのね〜。私は産後第1作目、頑張るわよ、ね、あなた」
「佳代・・あはは・・。そういや左近、綾女とはどがいしたがじゃ」
「これを撮り終えたら、結婚する」
などなど、話が飛び交っている。そこへ長身の男がふらりと現れた。
「よ、左近」
「喜平次か」
メイクを取った喜平次は普通の青年で、左近と並ぶイケメンである。片手に大きなメイクボックス、もう片方は綾女の衣装をずらりと肩に担いでいる。
「俺は出演もするが、綾女専用のメイク&ヘアメイク&スタイリストだ。文句は言わせないぜ」
「なに?聞いていないぞ」
「聞かなくたっていいんだよ。綾女の肌の具合とか、体のラインを引き立たせる衣装の微調整とか、俺に任せておけばまず間違いはない。お前、綾女の正確なスリーサイズ知っているか?」
左近はふと立ち止まり、手で綾女の姿を想像しはじめた。真剣な顔だが、手つきがなまめかしい。
「ちょっと!何馬鹿なことやっているのよ!」
噂の主、綾女が真っ赤な顔をして乱入してきた。直後に喜平次と左近に平等にコブができた。
「この年になって、この衣装は恥ずかしいわ」
破獄の章、マイクロミニの衣装。
「この衣装が一番サイズが変わっているな。15歳の時だったよな、これ」
「そうね。背も伸びたし、あの時は初めての出演でほとんど覚えていないくらい、毎日必死だったわよ」
メイクを済ませた綾女が衣装の直しを受けている。ウエストを詰め、脇を出して胸元のゆとりを出す。
左近とすれ違い、木の上に立つ綾女。逆光で全体のシルエットが浮かび上がる。
以前と変わらず、すらりとした体。きりっとした顔立ち。
「きれいだぜ。綾女・・」
左近はすれ違いざまに囁く。綾女は一瞬動揺したが、見事に演技で隠し通した。
葉隠れの里の近くで、爆風に飛ばされる綾女。アザだらけになるが、喜平次のメイクでうまく隠せた。
風呂に誘われるシーンもうまくこなし、そこで休憩が入った。
「あー、だめね。体が動かなくてあちこち痛いわ」
「まだまだ続くぞ。今からそんなことを言ってどうする」
「そうね、頑張らなきゃ」
そこへまたいい男がやってきた。
「俺の出番はまだかよー。早くしないとせっかく覚えた台詞、忘れちゃうよ」
大あくびをしながらワイヤーアクションの担当者のところで話し込む蘭丸。
そして、前作では綾女の2度による失敗で撮りなおしとなった、蓬莱洞のシーン。
左近の顔が近づき、唇が触れる。綾女の平手により左近が顔を背ける。
1回でOKになった。
「え?もういいのか?」
非常に残念な顔をした左近。そのあと木陰でたっぷりと綾女の唇を味わおうとするが・・・。
「左近、綾女のメイクが取れるだろうが」
喜平次のいやみたっぷりな出現に泣く泣く諦めた。
その後の二王門での立合い。
「さっきはよくも邪魔したな!」
「へん!どうせ家に帰ればいいようにしているんだろうが!」
「あいつはガードが固いんだ」
「そんなの知るか!」
鋭くそんなことを言い合っている。
そして左近は喜平次の槍を変な方から刺され、倒れ伏してしまう。
「やっと俺の出番だな」
ワイヤーでつるされた蘭丸。見事に長い長い台詞を噛まずに乗り切った。
その直後、龍馬の槍に刺されてしまう。
左近との別れ。
綾女の涙が左近の上に落ちる。
劇場版だけのラスト。左近の太刀を持つ、髪を下ろした綾女。憂いを秘めた、落ち着いたモノローグ。
そして撮影は終わった。
「え?撮影は今日で終わったんじゃないの?」
「一番大事なところを撮るから、必ずくるように」
監督から直接言われた綾女は、翌日撮影現場に行った。
「おせぇぞ、綾女」
喜平次に手首をつかまれ、髪をまとめられ、メイクを施される。
「何なの?そんなシーンあった?」
「黙ってろ、口紅が塗れねぇだろ」
口は悪いが、丁寧にメイクをしていく喜平次。
「たく、左近のやつが見境ないだろうから落ちないようにしなきゃな」
独り言を言いながらもメイクが完了する。
「あっちに着替えるんだ」
振り向くと、そこには純白のドレスがあった。綾女はゆっくりとそのドレスを手に取り、くすっと笑った。
「みんな・・・」
「さっさと着替えろよ、時間ないんだからよ」
「はいっ」
綾女はドレスに着替えた。最後に喜平次がベールをかぶせ、ティアラを載せる。ブーケを持った綾女は兄の進之助にエスコートされ、ゆっくりとバージンロードに足を踏み出した。
祭壇の前には白タキシードの左近が待っている。
「左近」
「綾女、とてもきれいだ」
誓いのキスをし、指輪の交換。結婚証明書へのサインをしてふたりは新しい門出に立った。
これで本当の最後。
Actorは終わりを告げた。
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