「ここが左近のマンション?」
見るからにグレードが高そうなマンション。左近はひとりで住んでいる。
「わぁ、広い。私のところと大違いね。へー、すごーい」
綾女はあちこちを見て回った。
「わ、このお風呂も広い」
「ベッドルームもステキ。この部屋だけで私の部屋が入るわね」
サイドテーブルに置かれた綾女の写真。長い髪の頃。左近と現世で出会った頃。
「今年も発掘作業があるの?」
「ああ、あるよ」
「そっか。今年は行かれないな。正念場だもの」
「時々応援しに行くよ」
綾女は首を振った。
「大丈夫」
「じゃあ、ご飯を作りに行こうか」
「ありがとう。でも本当にいいよ。気持ちだけで十分」
綾女は写真をそっと戻した。
食事は左近が用意していた。
「え、これ左近が作ったの?」
手先が器用でまめな左近は、料理にもこだわりを持ち、なかなかの腕を持っていた。
「私この間作っておいてよかった。この料理を見たら、もう作れないもの」
「綾女の手料理は美味しいよ。愛がこもっている」
「それフォローになっている?」
「綾女の料理は綾女にしか作れない、優しい味だよ」
左近はワインを一口飲んだ。その姿も様になる。綾女が見ていると左近が勧めた。
「でも私未成年・・」
左近が口移しでワインを綾女に飲ませた。口当たりがフルーティーでおいしい。
「おいしいね」
「だろ?綾女の二十歳の誕生祝はこのワインかな。誕生日はいつだ?」
「6月。6月20日。左近は?」
「俺は4月20日。ちょうど2ヶ月違いだな」
「そうだね。あと少しで左近は22歳なのね」
「誕生日プレゼントには何をくれる?」
「左近の望みをひとつ叶えてあげる」
左近は綾女を見つめた。いつもと変わらない笑顔だが、これを言ったらどうなるだろう。
「今宵、一晩をともに・・」
「いいわ」
綾女は年明けの左近との電話から気持ちを固めていた。
綾女の快諾に左近は拍子抜けをした。
「綾女、早まるな。今のは戯れなんだ。本気にするなよ」
「言い出したのは私よ。左近がどんな答えをするか見当はついていたし」
おそらくクリスマスのことが後を引いているのだろう。
「本当にいいのか?」
綾女は恥ずかしそうに頷いた。
- 現代版
- 24 view
この記事へのコメントはありません。