梅雨の晴れ間とはいえ、すでに陽射しは夏そのもの。
「6月15日か…。自分の命日に生きているなんて不思議な話だ」
左近は綾女に買い物を頼まれ、賑わうスーパーに来ていた。
ここ数日、綾女は元気がない。左近の前では変わらない様子を装っているが、早く寝ることが多くなった。
「あいつの好物を買って行ってやるか」
帰宅するときれいにそうじがされており、綾女は台所で食事の下ごしらえをしていた。
「左近、ありがとう。助かったわ」
「具合は大丈夫なのか」
「うん。今日は調子がいいの」
久しぶりににこやかな笑顔を見せる綾女だが、左近は心配が抜け切れなかった。後ろからそっと抱きしめる。くすぐったげに綾女が笑った。
「ほら、危ないから。お買い物ありがとう。休んでいて」
うなじに赤いしるしをつけ、左近は買って来たものをしまいはじめた。
「左近。これは私からのプレゼント」
夕食の前に綾女は小さな封筒を渡した。
「なんだ?プレゼントって」
綾女は顔を真っ赤にした。
「見れば・・わかるわよ」
出てきたのは数枚のモノクロ写真だった。左近はすばやくめくり、綾女を見た。
「まさか・・・」
「今日は父の日でしょ」
最近調子が悪かったのも合点がいった。左近は綾女を優しく抱きしめた。
「ありがとう、綾女」
綾女は嬉しそうに左近に擦り寄った。
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