夜は嫌い。
ましてや、満月はもっと嫌い。
あの時と同じように、あなたは満月の晩に逝ってしまった。
顔は腫れるほど泣き暮らした日々は、もう3年になる。
時は不思議なものね。それとも涙も悲しみも枯れ果て、麻痺してしまったのかしらね。
あなたの部屋、繰り返しあなたと過ごした夜。まだ、あなたの匂いが残っていたのに。
匂いを消したくなくて、すぐに閉め切ってしまった。
でね、今日思い切って入ってみたら、閉め切っていたのに匂いは消えていた。
不思議なことに家具に埃も積もっていなかった。
寝乱れたままだったベッドもきちんと整えられていた。
私、機械的に整えてしまったのね。
カバーをめくると、茶色の髪が一筋ついていた。
ああ、あなた、ここにいて私を待っていたの?
手に取ろうとすると、溶けるように消えてしまった。
そうか。
あの時、あなたは風になったときも3年は私のそばにいたものね。
でもその後は、気づいたら消えていた。
今も、もうその時なのかもしれない。
そうして、人は役割を終えて、深い愛情だけが残っていくのね。
「何書いているんだよ」
急に後ろから覗き込まれ、私は慌てて送信ボタンを押してしまった。
「あ、あああーー!」
「いきなりなんて声を出すんだ」
「だって・・だって・・応募、しちゃった」
「応募?」
私が書いていたものは、あるCMの情景の応募だった。1等は旅行券が当たる。
「もう!もっと推敲したかったのに!もう取り消せないよう・・・」
肩を落とした私を、ポンポンと軽く叩くそいつ。
「当てようと思って応募していたわけじゃないんだろ?落ちてもまぁ、しょうがないじゃないか」
「そうよね・・はぁ・・」
自己陶酔しながら書いていただけに、いきなり叩き起こされたような寝覚めの悪さが残っている。
「何のCMだよ?」
「内緒」
後日、当たったという知らせが届き、そいつとテレビを見た。
そうして、人は役割を終えて、深い愛情だけが残っていくのね。
・・・輝きは失われない。クールダイヤモンド
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