夜中に目が覚める。
左近は体を起こして消えた気配を探した。
昨夜から降り続いた雪は、ある程度積もったらしい。障子に映る雪明かりが明るかった。
布団の温もりがたちまち凍てついていくが、左近は構わずそっと障子をあけた。
庭先に人影がある。
この寒いのに夜着一枚きりで、髪をゆったりと結んだ綾女が立っている。
いつからそこにいるのか、この寒さではわからなかった。
「寒くはないのか」
左近の問いに、綾女が振り向いた。頬はピンク色に染まり、唇も赤い。それが黒髪と雪の白さに映えて、左近はじっと見つめた。
「香澄の里を思い出していた。あそこも雪が深くて、なかなか春が来なかった」
綾女の声に左近は我に返った。まさか見惚れていたなんてとても言えないし、気づかれるのも照れ臭かった。
そっと綾女の後ろから腕を回し、抱きしめる。
意外なことに綾女は抗わず、その身を左近に預けた。
ひんやりとした体。手は氷のように冷え切っていた。
「いつからここにいたんだ、こんなに冷えて」
「ほんの数刻。ついさっきだ」
髪までも冷えている。左近は綾女を抱き上げた。
「何を・・」
驚いた綾女が振りほどこうとすると、左近の目が綾女を射抜く。怒ったような、困ったようなそんな感情があった。
「風邪をひくだろう?布団に戻る」
綾女は頬を赤くしていた。寒さだけではない赤さ。そして体にしみわたる左近の温もり。
「左近」
「ん?」
「温かいな」
「そうか?」
左近は綾女を抱き上げたまま自分の部屋に入った。
「私の部屋は隣だが」
綾女を左近の布団に下ろしながら、左近は答える。
「俺が温めてやる」
「や、やだ!」
慌てふためく綾女を片手で難なく押さえつけて、左近は笑った。
「何もしやしないさ。ただ一緒に寝るだけだ」
「本当に?何もしない?」
少しおびえた瞳の綾女。かろうじて一線は越えていないが、もう時間の問題である二人。
「してほしいのか?」
からかう左近に綾女は本気で怒る。
「してほしいわけないだろ!」
左近に背を向けるが、左近は優しくその体を絡めとった。
「こうすれば、温かいだろう・・?」
うなじにそっと唇を落とす。だがすでに綾女は寝息を立てていた。
「・・・俺はいつまで我慢できるかな」
左近はつぶやき、もう一度綾女を深く抱きこんで眠りについた。
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こんにちは、おりぼんです。
このお話を読んでも感想の言葉が、やっと出てきました。
こういう、やさしい左近が好きです。
だから、妖刀が出た当時、すっごい左近が好きだったんだなぁ、と。
また、良いお話を書いていただき、ありがとうございます。
コメントありがとうございます。
いつでも左近は綾女を探しているんですねぇ。
こういうお話を書いていると、自分も恋をしているような気分になれます。
>良いお話
照れますっ。
でも、書いているときはさほどでなくても、後で読み返すといいお話かもって思えるものが結構あります。
やはり「愛」なのでしょうね^^