辺りはとても静かだった。
天空に浮かぶ丸い月を見上げているのは、綾女。
隣に横たわっているのは左近。
2人とも小さい傷なら数多くあるが、命にかかわるような怪我はしていない。
「たいそう、疲れたな」
ため息交じりに左近が呟いた。
「左近?」
綾女が体を起こし、左近を見る。
「綾女。俺は戦いが終わったら言おうと思っていた。お前とは、男と女として、共に…生きていきたい…」
左近は恥ずかしげに顔を横に向けた。最後は聞き取りにくかったが、綾女はしっかり理解した。頬が染まっていくのがわかる。
「ああ、それもいい」
左近は嬉しそうに綾女を抱きしめた。鎖帷子が痛い。
「痛い、痛いぞ左近」
「あ、すまん」
左近は素早く服を脱ぎ、また綾女を抱きしめた。…上半身何も着ていない状態である。
「そんな・・左近・・」
「ずっと好きだった。嬉しいんだよ。綾女」
「もう」
目のやり場に困りながら綾女は左近の腕の中に納まる。左近の鼓動が聞こえる。
「脈、速くないか?」
「当り前だろう。綾女が俺を受け入れてくれたんだ。そういうお前も」
綾女の手首に長い指を絡ませる。
「速いぞ」
2人は見つめあって笑った。
山を下りると龍馬がいた。
「おんしゃらも無事だったん…」
左近の後ろに広がる薔薇。綾女と手をつないでいる。綾女は慌てて手を振りほどこうとしている。
「そうかそうか、そういうことか。やっと思いが届いたんだな、左近」
「そういうことだ」
そして3人は姿を消した。
- あの時代
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