俺は進之助。
間違っても「おら、しんのすけ」とのたわる幼稚園児ではない。
綾女の兄、といえばわかるだろうか。
妖刀を綾女に託し、俺は一人で巨大な化け物に立ち向かい、散った。
綾女は無事だろうか。逃げおおせただろうか。
それだけが心配だった。
やっと成仏し、久しぶりに下界を眺めていると綾女がいた。
まぁ、なんという格好だろう。あんなに生足を出して、マイクロミニからはあの男を喜ばせるような光景がちらちら見える。
あの男とは、日向の左近だ。
何でもない風を装っているが、綾女にベタ惚れなのはわかる。その容貌が俺より美形なのが気に食わない。
綾女は超鈍感娘なので、左近の邪心にはまったく気づいていないのが幸いだ。だが桔梗という娘の愛情表現には気づいたらしい。それがきっかけで妖刀の力を一気に目覚めさせたのもすごいものだ。一方左近はまだ目覚めていない。ふっふっふ。
しばらくはつかず離れずで俺も安心して見ていた。
がっ・・・!
雪の鳳来洞で綾女の唇を奪いやがった。綾女も一瞬甘い声を出して、兄の俺もドキッとしてしまった。いやいや・・・コホン。
でもやはり綾女はなびかず、左近が死ぬ間際になって泣いた。
いまさら気づいても遅いのに。
俺は絶対認めたくないが、綾女も左近が好きだったんだな。
左近の奴め、愛する女を泣かせて死ぬなんざ、この兄が許さないぞ。
疲弊した左近の魂がヨレヨレと昇ってくる。
「綾女の元に戻れ。綾女を幸せにしろ」
こんなことは言いたくなかった。ちくしょー。
でも可愛い妹の幸せのためだ。綾女を笑顔にできるのは、もうこの男しかいないのだから。
俺はグーで左近の魂をぶっ叩き、左近の肉体に戻してやった。
あーあ、しっかり生き返ってやがる。でも綾女の嬉しそうな顔。こうしてあげてよかったんだろうな。
その後のことは俺はもう見ることもなかった。
1年くらい知らん振りを決め込んでいたが、どうしても気になってまた覗いてみた。綾女のお腹が大きくなって、その腹を左近が触って綾女が微笑んでいる。
よかったな、綾女。
- あの時代
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こんにちわ、おりぼんです。
コメントしようかと、ずっと迷っていたのですが…ある意味、このお話が最高傑作かも?と思いました。
グーで殴るなんて(笑
いいお兄ちゃんですねぇ
私もこういうの、書ける様になりたいです。
こんばんは。
このお話はとっても気持ちよくトントンと書けました。
きっと進之助兄さんはこんな気持ちで綾女たちを見ていたんでしょうね。
可愛い妹を嫁にやる兄の寂しさ。何となくわかります。
メールありがとうございました。
さっそくご案内を返信させていただきました。
楽しみにしています♪