「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

  1. テーマ
  2. 20 view

手袋

「寒い」
冷え込みが強くなったある朝、綾女は外に出て呟いた。
これで天気がよければ少しは暖かくなるのだが、よりによって雨が降り出しそうな曇り。
「あったかいな」
後ろから暖かい体が、綾女を包み込む。
「もう、動きにくいからやだ」
綾女はその体をどかし、新聞を取った。
「今日は休みか。いいなぁ、綾女は」
洗面台で左近が羨ましそうに言う。
「何言っているの。5日ぶりの休みよ。また明日から仕事なんだから、今日中にやらなきゃならないことがいっぱいなの」
冷蔵庫はすっかり空になり明るい。そうじは・・・しなくても左近が丁寧にしてくれている。
「じゃ、行ってくる」
「いってらっしゃい」
玄関で熱いキスを交わし、今晩もな、と耳元で囁かれ、綾女は真っ赤になった。その頬に触れた左近の指。
寒そうにポケットへ手を入れ、左近は出かけていった。
左近の手は、綾女より一回り大きく、綾女の手を包み込んでしまう。指も長い。綾女が知っている手で一番好きな手だった。
「そうだわ」
開店早々にスーパーで買い物をし、上の階に行って毛糸を買った。
家に戻って食事の下ごしらえを済ませると、手袋を編み始めた。
左近が寒くないように。愛情を込めて丁寧に編んでいく。
気づくと手元は暗くなっており、綾女はひとつ伸びをした。肩もだいぶ凝ってしまい、首を回して少しでもほぐそうとした。
「できたわ」
あたりを片付け、夕食を作り始める。そろそろ左近からの電話が入る頃。
冷えた体をお風呂で温め、左近と食卓を囲む。
「これ、編んでみたの。明日から着けてみて」
綾女が編んだ手袋を左近に差し出した。目が詰まって少し重いが、暖かい。
左近がはめると大きさもちょうどよかった。
「これはいいなぁ。ありがとう」
綾女を抱きしめるが、肩の凝りに気づいた。
「肩、パンパンだぞ。あとで揉むから」
「え、ああ、いいって。明日には戻るから大丈夫よ」
綾女は本気で拒否した。なぜなら、肩だけでなく全身をほぐされ、綾女は甘い声をあげることになるからだ。
「肩だけだよ。何を怯えているんだ」
「本当よ、肩だけよ」
だが。
いつもどおりの夜になってしまい、翌朝綾女は腰を押さえて仕事に出かける羽目になった。
左近は綾女が編んだ手袋をして、幸せ気分でいっぱいだった。

テーマの最近記事

  1. 織姫15

  2. 織姫14

  3. 織姫13

  4. 織姫12

  5. 織姫11

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


カテゴリー
アーカイブ