「あっ」
左近が無理やり綾女を押し倒した。着やせしているが、その服の下は鍛えられた男の体があった。両手を左近の片手で簡単につかまれた綾女は、足で左近を蹴ろうとする。
「離せ、左近」
夜着の裾から白い足が見え隠れする。それが左近の欲望に火をつけていることなど、綾女は思いもしなかった。ただこの目の前の男から逃げたかった。
左近は簡単に綾女の体を封じ込める。片手で綾女の手、足で綾女の足を押さえた左近は、開いた手で綾女の髪をほどいた。畳に広がった髪は甘い匂いがし、艶やかだ。
「左近、何をする」
身動きできないため、言葉で左近を制しようとする綾女。けれどその声には女の怯えがあり、弱い響きしかなかった。
こんな形で左近の”男”を否応なく感じるのは嫌だった。まして明日は襲撃の日。
「なぜ、そんなに死に急ぐんだ」
左近が聞いた。綾女は下から左近を睨む。
「死に急ぐ?私は信長を討つなら相討ちでも構わないと思っているだけだ」
左近は綾女の言葉を塞いだ。左近の舌が綾女の舌に絡まる。綾女は気持ち悪がり、目を閉じて眉間にしわを寄せ、逃れようと首を振った。それでも左近の唇は離れず、荒々しく吸い取る。
「い・・やっ」
かろうじて綾女が言葉を発した。左近の唇が離れ、唾液が糸を引いた。綾女の唇はすっかり艶やかに紅く染まっている。やっと開放され、胸が早く上下している。自覚はしていなかったが、綾女の瞳は潤み、左近を見上げていた。
「どう・・して、私を・・」
抗議する言葉も左近には甘い響きでしかなかった。綾女は初めて経験する口づけに、頭がぼうっとなっていた。体は弛緩し、ただ左近を見つめていた。
綾女の変化に左近は気づき、抑えていた力を緩めた。
その瞬間、綾女は体を起こし左近から離れようとした。しかし後ろから左近に抱きすくめられ、うなじに熱いものを感じた。
「離せ、左近・・離して・・」
2人の夜着は乱れ、綾女の細い肩が見えていた。左近が施す熱いものは肩から背中に次々と落とされる。綾女は体の力が抜けそうになり、左近の腕につかまった。
「こんな・・いや・・」
吐息とともに綾女が呟く。左近が綾女の帯に手をかけた。ほどくために。やがて帯はゆっくりと弧を描いて床に落ちた。綾女は前をかき合わせようとしたが、左近に両手をつかまれ、壁に押さえつけられた。少し手を触れるだけで、綾女の体はあらわになる。あわせの隙間からは、深い谷間が綾女の”女”を主張している。左近は空いた片手で夜着の上から綾女の体のラインを丁寧になぞった。
「いやっ」
綾女が体をよじる。左近の指が主張し始めたふたつの頂点を探り当て、夜着の上から爪で引っかく。それは影を落とすほど、しっかり立ち上がっていた。
カリ・・・カリ・・・
「あ・・はぁっ」
綾女が身をよじり、甘い声を上げる。体の芯が熱い。どうして、私はこんなに女なんだろう。綾女は左近に弄ばれているようで悔しかった。
左近が夜着をはだけ、じかに綾女の乳房に触れる。綾女を押さえていた手も離し、ゆったりと乳房を愛撫する。綾女は体が崩れそうになり、左近の肩につかまる。
「だめ・・左近・・」
すでに女の声になり、体も女として左近に反応している。だが理性ではまだどこか拒む気持ちがあった。
する・・・。綾女の夜着が床に落ち、その体すべてを左近の前に晒す。忍び装束で身を固めている時とは違い、女性のラインが際立っている。
「なんてもったいない」
左近の手が全身を愛撫し始める。左近の夜着も床に落ち、2人は生まれたままの姿になっていた。綾女は奥底から疼くような快感を覚えていた。
「左近・・どうして今、私を・・?」
掠れがちになる声で綾女が尋ねる。
「お前が、生き急ぐからだ。自分の身を大切にして欲しいからだ」
綾女の汗ばむ肌を愛しながら左近が答える。
「左近には・・関係な・・」
綾女の唇を塞ぐ。しばし唇を愛撫してから、左近は耳元で言った。
「俺は、お前に初めて会ったときから惹かれている。お前を幸せにしたいと思ってはいけないのか?」
綾女は驚いたように左近を見つめた。時々優しげな顔で自分を見る左近が、そんな想いを抱いていたとは気がついていなかった。
「幸せ・・?私は、里も女も捨てたのに」
「いや、お前は十分女だ。こうして俺の腕の中にいるお前は紛れもなく綾女というひとりの女だ」
左近は綾女を抱き上げ、布団に運んだ。そっと下ろす。
愛おしそうな切なげな左近の顔を見たとき、綾女の中で何かがはじけた。
「私に、どのような幸せがある・・?」
「男と女としての幸せだ。俺はまたお前を抱きたい。できれば夫婦としてな・・」
綾女の目から心ならずも涙が流れた。その涙を、左近の唇が次々に吸い取っていく。綾女は左近の首に抱きついた。
「左近・・」
「だから、約束してくれ。必ず生きると。生きて、一緒にこれからをともにしよう」
「ありがとう」
綾女は左近をゆっくり受け入れた。今までの左近の表情や言動、行動には自分に対する想いが溢れていたことにやっと気づいた。開放された綾女の心に、左近に対する想いが新たに湧いてきていた。
2人の熱い吐息が重なる。そして左近は積年の想いを綾女の中に放った。綾女はすべてを受け入れた。
戦いの中で2へ行く
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